ろう者が表現した「音楽」を映画にしたアート・ドキュメンタリー『LISTEN リッスン』。会場では来場者に耳栓が配られるほど、徹底した無音状態が作り出される。完全無音の音楽から、聴者は何を感じるのか。ろう者にはどのように受け入れられるのか。
この映画の受け取り方は、手話のわかる聴者、手話のわからない聴者、ろう者によって全く違うものになるだろう。もちろん、難聴者や日本手話のわからない外国人のろう者、などによっても感じ方は変わるだろうが、大きく分類すると、この3つであろう。
手話のわかる聴者として私が感じた事は「なんてうるさい映画なんだ」というものだった。もちろん、音は耳から全く入ってこない。目の前にある無音の映像のみを見ているはずなのに、脳内では自然と音を再生してしまう。それも、58分もの間、ひっきりなしに。
手話がわかるから自然と手話に音を付け足してしまうのか、そもそも身体の構造上、耳が聞こえる人は無音の音楽を受け入れられずに、脳内で勝手に音を作り出してしまうのか………。この「無音のうるさい映画」は、これまでのどの映画とも、全く違った経験を与えてくれた。
手話に関わっている人も、手話が少しもわからない人も関係なく、全ての人に「体験」してもらい映画だ。
明日、5月22日(日)に共同監督の牧原依里と「日本手話を使う聴者から観た『LISTEN リッスン』の世界」というテーマで渋谷のUPLINKにてトークショーを行います。是非とも多くの方に来て頂ければと思います。
→トークショー詳細
共同監督・撮影・制作:牧原依里・雫境(DAKEI)
出演:米内山明宏、横尾友美、佐沢静枝、野崎誠、今井彰人、岡本彩、矢代卓樹、雫境、佐野和海、佐野美保、本間智恵美、小泉文子、山本のぞみ、池田華凜、池田大輔
配給:アップリンク 宣伝:聾の鳥プロダクション 協賛:モルデックスジャパン
2016年 / 日本 / 58分 / DCP / サイレント